インターネットやスマホの普及、コロナ禍におけるデジタル化の加速などを受け、BtoBの顧客獲得・育成活動のあり方に大きな変化が現れています。具体的には、従来の対面営業型から、Webを中心としたBtoBマーケティング活動と営業活動とを組み合わせた「統合型の活動」にシフトしつつあるのです。
この記事ではBtoBマーケティングに関する基礎知識から最新のマーケティング戦略、BtoBマーケティングを成功させるためのポイントなどを、事例を交えて分かりやすくご紹介します。
BtoBマーケティングとは?
BtoBは「Business to Business」の頭文字を並べたもので、企業が企業に対して商品やサービスを提供する形のビジネスモデルを指して使われる言葉です。このようなBtoBのビジネスモデルを前提として行われるマーケティング活動を総称して「BtoBマーケティング」と呼びます。
近年のBtoBビジネスでは、下記の図に示すようにマーケティング活動と営業活動を組み合わせる形で顧客の獲得に臨みます。集客からリードの獲得・育成・発掘までをマーケティング活動として実施し、発掘したリードに対して営業活動を展開するというのが一般的な流れとなってきています。

BtoBビジネスとBtoCビジネスの違い
さて、法人顧客を対象とするBtoBビジネスは、一般消費者をターゲットにするBtoC(Business to Consumer)のビジネスとは様々な点で異なります。ここでは、BtoBビジネスとBtoCビジネスの大まかな違いを見てみましょう。
BtoBビジネス | BtoCビジネス | |
顧客 | 法人・組織 | 一般消費者 |
顧客数 | 少ない | 多い |
取引単価 | 高額なものが多い | 低額~高額 |
取引回数 | 少ない | 多い |
購入決定者 | 法人・組織内の決裁権限者 | 購入者本人 |
購入検討期間 | 長期に渡る | 短期間 |
購入動機 | 組織の利益・投資 | 個人の利益・満足(ウォンツ) |
BtoCのビジネスは、基本的には一般消費者を対象として営まれます。このため、ターゲットである消費者一人ひとり(個人)の購買意欲をいかにして高めるかがBtoCマーケティングのポイントとなります。
一方、企業やNPO、官公庁などの組織などの法人を対象とするBtoBのビジネスでは、アプローチする対象は「個人」ではなく「組織」です。商材やサービスにもよって違いはあるものの、通常は一度の購買活動に利害の異なる複数の人間が関わり、かつ検討期間も数か月~数年と長期に渡ることが少なくありません。
このため、顧客組織内の購買プロセスを把握し、どのタイミングで誰に対してどのようなアプローチをすべきなのかを正しく見極めた上でマーケティング施策を組み立てる必要があります。この点がBtoBマーケティングの難しさだと言えるでしょう。
BtoBビジネスの過去と現在
従来BtoBビジネスにおける顧客獲得活動は、展示会やイベントなどで獲得する名刺を起点とした訪問営業が中心でした。
しかし、インターネットやモバイル端末の普及などを背景に、昨今ではオンラインでの集客が主流となりつつあります。コロナ禍におけるデジタル化の促進やDX(デジタルトランスフォーメーション)の活発化といった動きも、こうした流れに拍車をかけていると言えるでしょう。
このようにオンライン化が進んだことに加え、CRMやマーケティングオートメーション(MA)などのマーケティング用ツールが整備されてきたことを受け、BtoB企業における集客業務の進め方は従来の営業単独型から分業型へと徐々にシフトしてきています。
従来:営業単独型
営業担当者がテレアポなどにより顧客企業との接点を作り、足しげく訪問することで信頼関係を築いて商談に持ち込むスタイルです。
現在:分業型
見込み顧客の獲得・育成をマーケティング部門が担当し、インサイドセールス部門で見込み顧客の絞り込みを行った上で、受注確度の高まった見込み顧客に営業担当者がアプローチするという具合に、営業プロセスを複数の部門で分業するスタイルです(※1)
※1:見込み顧客の獲得・育成・絞り込みを行う一連の活動をデマンドジェネレーションと呼びます。デマンドジェネレーションについては、下記の記事もぜひあわせてご一読ください。
関連記事:【わかりやすい】リードジェネレーションとは?具体的な手法と事例も紹介

なお、セールスフォース社が提唱する『THE MODEL』では、マーケティング部門、営業部門の他にインサイドセールス部門、カスタマーサクセス部門を社内に設け、営業プロセスを4分割して推進する方法が推奨されており、この型の営業プロセスを採用する企業も徐々に増えてきているようです。
BtoBマーケティングの手法一覧
次に、BtoBマーケティングの具体的な手法について見ていきましょう。BtoBマーケティングの手法はオフライン施策とオンライン施策に大きく分類することができます。

オフラインの施策
オフラインの施策は、原則としてインターネットを使用しないで展開されるマーケティング施策です。オンラインマーケティングが発展する以前から用いられてきた伝統的なやり方で、以下のような手法があります。
- 展示会や見本市への出展
- テレビCM
- 新聞・雑誌などへの広告出稿
- 交通広告
- ダイレクトメール
オンラインの施策
一方、オンラインの施策はインターネット上で展開されるマーケティング施策で、最近ではBtoBモデルにおいても注力している企業が増えています。主に以下のような手法があります。
- Webサイト運用
- Web広告
- SEO(検索エンジン最適化)
- SNSマーケティング
- コンテンツマーケティング・オウンドメディア
- メールマーケティング
- 動画マーケティング
デジタルマーケティングについて
ITやデジタルの力を活用したマーケティング手法を「デジタルマーケティング」と呼びます。
近年では、オフライン/オンラインの別を問わずデジタルマーケティングが一般化してきており、たとえばオフラインの施策としては、液晶パネルなどを活用したデジタルサイネージ、展示会などにおけるVR・ARの活用が進んでいます。
オンラインの施策で用いられる手法は、基本的にすべてがデジタルマーケティングの手法だと言っても間違いではありません。前述のような手法に加え、動画マーケティングやコンテンツマーケティング、スマホアプリの活用などもデジタルマーケティングの手法の一つです。

関連記事:【わかりやすい】デジタルマーケティングとは?基礎と手法を事例付きで解説!
参考にしたい3つの成功事例
ここで、これからBtoBマーケティングに取り組まれる方に是非参考にしていただきたい3つの成功事例をご紹介します。
株式会社ロジクエスト(MA/メルマガ/Web接客)

卸、小売、医療、メーカーなど幅広い業種向けに配送サービスを提供するロジクエスト社では、全国の64拠点で勤務する100名以上の営業担当が経験と勘を頼りにした独自の営業活動を展開されていました。拠点ごとに現場に根付いた工夫を営業活動に活かせていた半面、全社規模でのマーケティングが行えていなかった点に課題を感じていたといいます。
そこで、営業およびマーケティングの効率化に向けた見込み顧客の一元管理を行うとともにMAツール「SATORI」を導入してマーケティング活動の可視化・自動化に取り組みました。更に、営業、マーケティングと併設する形でインサイドセールス部門を立ち上げ、営業体制の全面的な改善も行っています。
具体的には、「SATORI」のメルマガ配信やプッシュ通知、名刺情報との連携、そしてホームページでのポップアップ機能等を活用してオンラインマーケティングの基盤を構築。資料や見積依頼などをWeb上のフォームを用いて行えるようにしたことで、Webからの反響数が10倍に増加しました。また、メルマガ配信施策によりアポイントの獲得率が従来の2%から3倍以上の平均6.5%に向上。Webからの問合せは平均40%のアポイント獲得率をはじき出しています。
株式会社ロジクエストの事例はこちら:「SATORI」メールでテレアポの獲得率が3倍以上に!インサイドセールスの立ち上げと効率化を進めるDXプロジェクトの裏側
株式会社アスマーク(MA/ウェビナー施策)

市場調査やHR Techサービス、RPAの導入・運用支援などを手掛けるアスマーク社。オンラインで調査対象者を募集する「オンラインリクルーティング」のパイオニアとして知られている同社だけに、Webサイト運営を始めとしたオンラインのマーケティング施策には以前から取り組まれていたものの、全社としてデータを活用したマーケティング施策にはそこまで力を入れていなかったといいます。その背景には、同社の強みの1つが『営業力』であり、それによって順調に事業が拡大していたという事情がありました。
その一方で、足を使った昔ながらの営業活動には限界を感じておられたこともあり、顧客の分析からデータを活用したマーケティングを実施する方向に舵を切る決断をされました。
具体的には、営業データを蓄積するSFAツールとして「kintone(キントーン)」を導入、サイト上の顧客データを蓄積するMAツールには「SATORI」を採用し、これに社開発の顧客管理ツールをあわせた3つのツールでデータを連携し、データ分析の基盤を構築。自社ツール内のリード(過去に名刺交換をした顧客)とオンラインでCVした顧客、「kintone」の営業データを「SATORI」に紐づけることで、「SATORI」だけを見れば必要な情報を確認できる状態を整えました。これにより施策の効果検証を細かく見ることができるようになり、改善のスピードの向上を実現されました。
また、「SATORI」導入後にはセミナー開催に注力し始め、コロナ禍ではウェビナー施策へとシフト。ウェビナー参加者のその後の行動履歴を「SATORI」で追うなどして、ナーチャリングに役立てられています。その結果、ナーチャリング出来ているリードの数は1年でおよそ2倍以上にまで増加。顕在化したホットな顧客(スコアリングで30ポイント以上と定義)も順調に増加しているといいます。
株式会社アスマークの事例はこちら:高確度のリード件数が1年で2倍以上に!MA活用で顧客管理からウェビナー施策までを成功させた裏側
マーケティングオートメーション「SATORI」(オウンドメディア)

MAツール「SATORI」の開発・販売を手掛けるSATORIでは、オウンドメディアである「SATORIマーケティングブログ」にマーケティングの基礎知識やマーケティングオートメーションに関するノウハウ記事を定期的に投稿して見込み顧客の獲得に取り組んでいます。
具体的には、オウンドメディアを訪問した見込み顧客はホワイトペーパーや資料のダウンロード、セミナー・イベントなどに誘導するとともに、同社のMAツールである「SATORI」を活用してリードとして管理。スコアリングによりリードを「そのうち客」と「今すぐ客」とに分類し、分類にあわせたアプローチを展開しています。
BtoBマーケティングを成功させるポイント
最後に、BtoBマーケティングを成功させる上でぜひとも押さえておきたいポイントを3つのカテゴリーに分けてご紹介します。
1. 分業化と関連部門間の連携
本記事冒頭でも触れたように、BtoBの顧客獲得活動においては営業プロセスの分業化、および組織内における横の連携が重要なポイントとなります。
自社の組織構造・体制を踏まえて営業プロセスを見直し、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど関係部門が一丸となって活動できる体制を構築しましょう。
2. データを用いた状況の可視化
BtoBマーケティングのPDCAを効率的に回していく上では、リードの状況や施策の実施結果といったデータを整備し、数値化・可視化して関係者間で共有することが大切です。
MAやSFA、CRMといったツールを活用してデータを蓄積・整備し、ツールに備わるダッシュボード機能などを用いて「必要な時にすぐデータを確認できる」という状態を整えましょう。
関連記事:B2Bマーケティングにおける目標達成・業績評価指標(KGI/KPI)の活用を考える
3. 施策実施タイミングの最適化
複数のステークホルダが関与し、かつ検討から購入・導入までが長期化しがちなBtoBマーケティングにおいては、どのタイミングで誰に対してどんな施策を打つのかによって結果に違いが出てきます。
自社製品・サービスのカスタマージャーニー(バイヤージャーニー)を明確にした上で、適切なタイミングで適切な施策を打ちましょう。
カスタマージャーニーの作成手順については、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【専門家解説】カスタマージャーニーマップの正しい作り方・手順(事例・雛形付き)
以上、BtoBマーケティングを成功に導くためのポイントを3つ紹介しましたが、いずれも「言うは易し、行うは難し」で、初めてBtoBマーケティングに取り組む方にはハードルが高いと感じられるかもしれません。
自社だけでマーケティング戦略を練り上げたり、体制構築について検討したりするのが困難な場合は、マーケティング支援を専門とする企業に委託するのも一つの方法です。まずはBtoBマーケティングに関するセミナーなどに参加し、情報収集から初めてみるのもおすすめです。
SATORIでも様々なセミナー・イベントを開催していますので、ぜひお気軽にご参加ください。
BtoBマーケティングの今を知って最新の戦略を実施するには
難易度が高そうに思えるBtoBマーケティングではありますが、基本を押さえた上で時流に合った手法をうまく組み合わせていけば、徐々に自社ならではの「型」を作り上げていくことができるでしょう。
昨今ではMAツールを活用したオンラインでのナーチャリングがBtoBマーケティングの要と考えられていますが、そのほかにも様々なマーケティング手法があります。下記の資料で最新のBtoBマーケティング戦略をご紹介していますので、ぜひあわせてご一読ください。
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システムエンジニア/フリーライター/BtoBマーケターの3つの顔を持つワーキングマザー。
BtoB商材を扱うIT企業に在籍し、課題解決ブログの立ち上げ・SNS活用を始めとしたコンテンツマーケティングの導入に取り組んだ経験を持つ。
ライターとしては20年を超える経験を有し、『小さな会社のAccessデータベース作成・運用ガイド』(翔泳社)をはじめ、プログラミング関連の著書多数。
現在はIT企業にてシステム評価に携わりつつ、IT、マーケティング分野を中心に精力的に執筆活動を展開中。